万一に備えるための〜保険の相続対策
万一に備えるための〜保険の相続対策
文書作成日:2024/12/05
生命保険で甥や姪に財産を遺す

私に万一があった場合、相続人ではない甥と姪に財産を遺すことはできますか?

Q
今月のご相談

 76歳の単身生活者です。夫は10年以上前に亡くなり、子はいません。夫の遺族年金と駐車場の収入で生活しています。生活費や介護などの備えは十分足りており、経済的な不安はありません。高齢のため、近くに住む兄の子(甥と姪)が手伝ってくれることがあり感謝しています。万一、私が死亡したときには、その甥と姪にお金を遺したいと思っています。

 知人に話したところ、生命保険を活用すれば甥や姪に財産を渡せるとのことで、保険会社の担当者を紹介してくれました。その担当者から、以下の提案がありました。税金について詳しい説明は聞いていません。死亡保険金の税金の取扱いや留意点を教えてください。

【現時点で相続が発生した場合の概要】

<相続人>
 兄と妹(※)それぞれ子が2人いる

<資産内容>

  • 預貯金:5,000万円
  • 有価証券:2,000万円
  • 個人年金保険(受給中):年金額120万円(受取期間残り3年)
  • 自宅土地建物:約3,000万円
  • 駐車場として貸している土地:2,000万円
【意向】
 私が亡くなったときに、兄の子2人(甥と姪)に500万円ずつ確実に遺したい。
【保険会社からの提案内容】
保険種類 一時払終身保険(円建て)
死亡保険金 1,000万円
契約形態 契約者(保険料負担者):私
被保険者:私
死亡保険金受取人:甥、姪 5割ずつ
A-1
ワンポイントアドバイス

 今回の保険会社からの提案のように、甥御様と姪御様を死亡保険金受取人に指定することで、ご相談者様の意向どおり確実に財産を遺すことができます。死亡保険金の税金の取扱いや留意点については、詳細解説をご参照ください。

A-2
詳細解説
1.生命保険で財産を遺す

 生命保険は相続人でなくても保険会社が定める範囲であれば、甥御様や姪御様を死亡保険金の受取人に指定することができます。
 受け取る死亡保険金は、民法上、受取人固有の財産として取り扱われます。そのため、特定の人に確実にお金を遺したい場合に有効な手段といえます。

2.死亡保険金の税金の取扱いと留意点

 税金の側面からみると、死亡保険金はみなし相続財産として取り扱われます。ご相談者様の他の財産と合算して、相続税の対象になります。なお、死亡保険金を甥御様や姪御様が受け取る場合、甥御様や姪御様は一親等血族及び配偶者ではなく、相続人でもないため、以下の点を認識しておく必要があります。

  • 死亡保険金の非課税制度(500万円×法定相続人の数)を適用できない
  • 相続税2割加算の対象となる

 ご相談者様の場合、現在の資産内容だと相続税がかかることが推定されます。甥御様や姪御様が受け取る死亡保険金は非課税制度の適用ができないため、甥御様や姪御様も相続税を負担することになります。

 2割加算については、現時点での相続人であるお兄様と妹様も一親等血族及び配偶者には該当せず、加算対象となる点は同じですので、デメリットと捉える必要はありませんが、加算分も含めた税負担を考慮して死亡保険金を設定するとよいでしょう。

 また、今後のお二方との関係性がどうなるのかは分からない点にもご留意ください。時の経過とともに関係が希薄になった、あるいは不和が生じた場合に、保険契約の見直しを検討されるかもしれません。その際の保険金受取人の変更や解約返戻率についても、契約前に確認しておかれるとよいでしょう。

 なお、死亡保険金の非課税制度は、お兄様や妹様が受取人であれば適用することができ、相続税総額を抑制する効果を期待できます。甥御様や姪御様を含め、財産を相続する人の税負担を軽くしたいというご意向があれば、この機会にあわせて検討されるとよいでしょう。

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