家と財産を守るための〜不動産の相続対策
家と財産を守るための〜不動産の相続対策
文書作成日:2024/06/20
取り壊す建物の相続登記

相続した実家を取り壊して売却する場合も、相続登記は必要ですか?

Q
今月のご相談

 令和5年12月に母親が亡くなり、築50年以上が経過し劣化の目立つ実家を相続することになりました。私には持ち家があるため、建物を取り壊し、売却する予定です。先日、令和6年4月から相続登記が義務化されたと聞きました。実家は令和6年4月以前に相続していますが、相続登記はしていません。実家も相続登記義務化の対象となりますか。また、取り壊す建物についての相続登記は必要でしょうか。

A-1
ワンポイントアドバイス

 令和6年4月より以前に相続した不動産も、相続登記義務化の対象となります。しかし今回のご相談の場合、ご実家を取り壊して売却される予定とのことですので、必ずしも建物の相続登記は必要となりません。

A-2
詳細解説
1.相続登記の義務化

 令和6年4月から相続登記が義務化されました。内容は以下のとおりです。

  • (1)相続(遺言も含む)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。
  • (2)遺産分割が成立した場合には、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に相続登記をしなければなりません。

 (1)と(2)のいずれについても、正当な理由(※)なく義務に違反した場合は、10万円以下の過料(行政上のペナルティ)が科される可能性があります。
 なお、令和6年4月以前に相続した不動産も、3年の猶予期間がありますが、相続登記がされていないものは、義務化の対象となります。

(※)相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の資料収集や他の相続人の把握に多くの時間を要するケースなど。

 上記のとおりですので、令和6年4月以前に相続した不動産は、相続登記義務化の対象となります。ただし3年間の猶予がありますので、法施行日より3年経過後の令和9年4月までに相続登記が必要になります。

2.ご相談の場合の相続登記の要否

 今回のご相談の場合はご実家を相続した後、取り壊しての売却を予定されていますので、上記1.の申請期限内であれば、必ずしも建物の相続登記は必要となりません。解体も相続登記がなされていなくても行うことができます。取り壊し後に行う滅失登記についても、建物の登記名義が被相続人(お母様)のままであっても、相続人(ご相談者様)であれば申請をすることができます。

 ただし、上記1.の申請期限後に取り壊すのであれば、一旦、相続登記が必要になります。相続による取得後すぐの解体が決まっているのであれば、前述のように相続登記する必要はありませんが、上記1.のとおり、相続登記には「3年以内」という期限がある点に注意しましょう。ご相談の場合、経過措置の令和9年4月までに取り壊しがなされない場合には、相続登記が必要となります。

 今回は取り壊す建物の相続登記に関してのご相談でしたが、取り壊し後の土地を売却する場合には、その土地については相続登記が必要です。こちらも申請期限にご注意ください。
 つまり、ご実家の売却については

  • 取り壊す建物
    …相続登記は不要(相続登記の申請期限後の取り壊しであれば必要)
  • 売却する土地
    …相続登記が必要

ということになります。

 法律が改正され、今年から義務化が開始しました。3年の猶予はありますが、あっという間に3年は過ぎてしまいます。売却を検討されるのであれば、早めに近隣の不動産業者に相談しながら、建物の取り壊し時期を検討されるとよいでしょう。

 なお、建物を取り壊した後の更地の土地に対する固定資産税は、建物があることでの減額特例が適用されなくなります(建物があっても適用されない場合あり)。そのため「とりあえず建物だけ取り壊しておこう」というのも危険です。また、相続で取得した一定の不動産の売却については、税金が減額されるなどの優遇措置もあります。総合的に考えて、最もメリットがある対策を検討していきましょう。

 相続に関するご相談は、当事務所へお気軽にご相談ください。

[参考]
 東京法務局「相続登記が義務化されました(令和6年4月1日制度開始)

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